「母の想いをノートに残したいけれど、自分ではうまく書けないみたいで……」
そんなご相談を受けることがあります。
字を書くのが苦手になった、体力が落ちた、考えることが億劫になってしまった……。
けれど“心の中にある想い”は、ちゃんとある。
そんなときに選んでいただきたいのが、「代筆」という選択肢です。
この記事ではエンディングノートの代筆についてのポイントなどをお伝えしていきます。
そもそも、エンディングノートは代筆してもいいの?

そもそも、エンディングノートは大切な情報がたくさん載っているので、代筆していいのか気になりますよね。
答えとしては、エンディングノートは代筆しても問題ありません。
なぜなら、エンディングノートは法的な書類ではなく「自分の人生や気持ち、希望を整理するためのノート」だからです。
公的な効力が求められる「遺言書」とは異なり、誰がどのように書いても自由なのです。
エンディングノートと遺言書の違いについてはこちらの記事でご説明しています。
誰に代筆を頼んでもいいの?

基本的には、信頼できる人なら誰でもOKです。
- 家族(配偶者・子ども・きょうだい)
- 介護スタッフや医療関係者
- 友人・知人
- 専門家(エンディングノートサポーターなど)
「話をよく聞いてくれる人」「想いを丁寧に言葉にしてくれる人」に頼むことで、本人の気持ちがより自然な形で残ります。
“代筆”がもたらす、家族との絆

私自身も母、そして義父のエンディングノートを代筆しています。
▶母はがん治療の副作用で手に痛みが出ることがあり、またエンディングノートを書くという作業を億劫に思っていたので代筆という形を選びました。
市販のノートへの書き取りはかなり時間がかかることが予想でき、また書き切れない恐れもあったので満ち活ノートを活用しています。
これまでの母の経歴や亡くなったことを知らせて欲しい人など、全く知らなかった情報がたくさん出てきました。
聞いておかないと絶対にわからなかったことなので本当に聞いて良かったと思います。
お墓についてなども時々話したりしていましたが、人間って忘れる生き物ですよね。
大事なコトだからこそ書き残しておくことが大事で、私以外の人が見ても母のことがわかるようにできた安心感は大きいです。
▶義父については、自分で書くか私が書くかを選んでもらいました。
義家一同(姑、旦那、弟)が勢揃いの中でエンディングノートの代筆をはじめました。
冒頭の義父の性格の部分からみんなの意見がわれ、思いもよらない盛り上がりにとっても楽しい時間になりました。
もちろんノートを代筆するという名目がなければ聞き出しにくい項目もたくさんあります。
普段の会話の中で最期についてや、今の生活のお金のことなどを聞こうにもなかなか切り出せないですよね。
エンディングノートの代筆は「書く」というよりも「分かち合う」「寄り添う」作業。
そんな時間を過ごせることも大切な思い出となり、ぬくもりを感じる事ができます。
本人が話すことの意味

エンディングノートは、家族のためのものでもありますが、いちばんは「自分のため」のノートです。
だからこそ、「話すこと」がとても大切。
話しているうちに、自分の気持ちが整理されたり、忘れていた大切な記憶がよみがえったりすることもあります。
代筆は、その“内側の言葉”を拾い上げて未来に届けるお手伝いなのです。
代筆のときに大切なポイント

1. あくまで「本人の想い」であること
書く人の意見や価値観ではなく、本人の言葉を尊重することが最も大切です。
質問しながら丁寧に言葉を引き出し、表現が合っているかも確認しながら進めましょう。
2. 書く過程そのものが“今の整理”になる
エンディングノートを書くことは、
過去をふりかえり、
今を見つめ、
未来に備える作業です。
代筆を通して「これからどう暮らしたいか」「誰とどんな時間を過ごしたいか」といった“今の暮らし”のヒントが見えてくることもあります。
3. 一気に書かなくてもOK
何日かに分けて、少しずつ書くのもおすすめです。
その都度、思いが深まったり変わったりするのが自然。定期的に「見直す時間」も大切にしていきましょう。
まずは「話すこと」から始めてみませんか?

・話すのが得意じゃなくても大丈夫
・まとまっていなくても大丈夫
・気分が乗ったときだけでも大丈夫
ご本人が何かを残したいと思っていたらそれは大切なことが話せるサインかもしれません。
紙に書かれていなくても「話した」という時間は、心にしっかり残ります。
それを受け取って、言葉にしてくれる誰かがいれば、それだけで立派なエンディングノートです。
おわりに

エンディングノートには“ひとりで全部書くもの”という決まりはありません。
ご本人が書くのが難しいとき、家族がそっと寄り添って「言葉を引き出していく」
そんな関わり方もとてもあたたかなエンディングノートのカタチです。
「母の想いを残してあげたいけど、どうすればいいのかわからない」
「代筆って、どこまで手伝っていいんだろう?」
そんな迷いがあるときは、どうぞお気軽にご相談ください。
ご本人の声や想いが、少しずつでもカタチになっていくように。
あなたの“聞く力”と“つなぐ手”を、やさしく後押しできたらうれしいです。